2019-01-01から1年間の記事一覧

砂の女(映画)

『砂の女』 勅使河原宏監督 ☆☆☆☆★ 所有するDVDで再見。1964年のモノクロ映画。陰気な映画なのでしょっちゅう観る気はしないが、たまに観るとやっぱり面白い。 ご存知、安部公房の不条理小説の映画化である。昆虫採集のため休暇を取って砂丘に行った教師が、…

敦煌

『敦煌』 井上靖 ☆☆☆★ 昔からタイトルだけは知っていた井上靖の『敦煌』を読了。井上靖はアンソロジーで短篇をいくつか読んだ程度で、長編は初挑戦である。敦煌とは言うまでもなく中国の都市の名前で、甘粛省の北西部にある。かつてシルクロードの分岐点とし…

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 マイケル・ドハティ監督 ☆☆☆★ 6月15日に映画館で観てきたハリウッド・ゴジラの感想を書いておきたい。ちなみに、監督のマイケル・ドハティは前作『ゴジラ』の監督とは別人。しかし筋金入りのゴジラ・ファンらしく、そ…

ザ・プロフェッサー

『ザ・プロフェッサー』 ロバート・ベイリー ☆☆☆☆ 週末一日で一気読み読了。法廷スリラーにして、とことん痛快な王道エンタメである。何も考えずにハラハラドキドキし、ページを繰る手が止まらず、最後はスッキリ爽快、という心持ちを最大限に味わいたい人…

3人のアンヌ

『3人のアンヌ』 ホン・サンス監督 ☆☆☆☆☆ イザベル・ユペールの映画が観たくなり、なんとなく英語版のDVDを購入したのがこれだった。フランス映画ではなく、韓国映画である。舞台も韓国の海辺の町だし、ユペール以外の登場人物は全員韓国人。監督のホン・サ…

和宮様御留

『和宮様御留』 有吉佐和子 ☆☆☆★ 久しぶりに有吉佐和子の小説が読みたくなって、アマゾンで高評価だった『和泉様御留』を購入。私は知らなかったが、幕末の政略のために婚約者との仲を引き裂かれ、京から徳川家に嫁入りさせられた皇女・和宮は、日本史上の悲…

座頭市喧嘩太鼓

『座頭市喧嘩太鼓』 三隅研次監督 ☆☆ 所有する座頭市ブルーレイ・ボックスの中から、久しぶりにまだ観ていない作品を鑑賞した。未見の作品はあと一、二本残っている程度。座頭市シリーズは大好きなので、時々このボックスを引っ張り出して観ているが、どうし…

コドモノセカイ

『コドモノセカイ』 岸本佐知子・編 ☆☆☆☆ 岸本佐知子のアンソロジー『楽しい夜』がとても良かったので、その後いくつか彼女のアンソロジーを読んでみた。 どうやらこの人はヘンな小説や屈折した小説の目利きらしいので、タイトルがそのものズバリの『変愛小…

冬物語

『冬物語』 エリック・ロメール ☆☆☆☆ ロメールの四季四部作中の『冬物語』を、所有している日本版ブルーレイで再見。『恋の秋』と『春のソナタ』については前のブログに書いているので、ご興味がある方はそちらもどうぞ。 さて、本作は四部作の中でもっとも…

ミッテランの帽子

『ミッテランの帽子』 アントワーヌ・ローラン ☆☆☆☆☆ 見慣れない名前の作家さんの小説なので大して期待しないで読んだが、これは大当たり。大傑作。小説を愛する方々全員に、絶対的推薦図書としてプッシュします。 今回はこれだけで終わっても良いぐらいなの…

人生模様

『人生模様』 ヘンリー・コスター / ヘンリー・ハサウェイ / ジーン・ネグレスコ / ハワード・ホークス / ヘンリー・キング監督 ☆☆☆☆ iTunesのレンタルで鑑賞。原題を直訳すると「O・ヘンリーのフルハウス」で、要するにO・ヘンリーの短篇五本を映画化した…

お知らせ - ツイッター始めました

なんと、この歳でツイッター始めましたので、一応お知らせします。ただそれだけです。 Hello Twitter! #myfirstTweet — 内野サトル (@satoru_ck) May 27, 2019

楽しい夜

『楽しい夜』 岸本佐知子・編 ☆☆☆☆★ 前に読んだ岸本佐知子氏のアンソロジー『居心地の悪い部屋』が印象に残っていたので、このたびハードカバーの『楽しい夜』を入手した。結果的に今回もかなり充実した読書体験ができたが、ただこれは相当に変化球揃いのア…

世界中がアイ・ラヴ・ユー

『世界中がアイ・ラヴ・ユー』 ウディ・アレン監督 ☆☆☆★ ウディ・アレンの1996年公開作品。米国ではブルーレイが出ていないようなので、日本版ブルーレイを取り寄せて鑑賞した。とてもリラックスした、肩の力が抜けた映画で、アレン映画としてのクオリティは…

恍惚の人

『恍惚の人』 有吉佐和子 ☆☆☆☆ すごく有名な小説だが、これまで読んだことがなかった。82年発表。ご存知の方も多いだろうが、老人性痴呆を扱った小説である。この題材は社会問題化して長く、ミステリ小説などでも頻繁に登場する題材になったが、おそらくこれ…

世の中にはうまい話もあるという話

世の中にはうまい話もあるもんだなあ、としみじみ思うことなど普通あまりない。みんなそうだと思う。仮にそう思うことがあったとしても、一瞬後には悲しいどんでん返しがやってきて「ああやっぱりな、うまい話にはウラがあるんだな」と思い知らされる、とま…

ダイヤルMを廻せ!

『ダイヤルMを廻せ!』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆☆☆☆ ヒッチコックの有名作だが、今まで観たことがなかった。公開は1954年、まさにこれから絶頂期を迎え、『裏窓』『知りすぎていた男』『北北西に進路を取れ』『サイコ』と名作を連発するようにな…

インターネット的

『インターネット的』 糸井重里 ☆☆☆☆☆ とあるビジネス系のブログで紹介されているのを読んで興味を惹かれ、アマゾンで取り寄せてみた。もともと2001年に出版された本の復刻版である。当時糸井氏は「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げたばかりで、その頃まだ新…

その土曜日、7時58分

『その土曜日、7時58分』 シドニー・ルメット監督 ☆☆☆☆ 2007年公開のシドニー・ルメット監督の遺作を、英語版DVDで鑑賞。フィリップ・シーモア・ホフマンとイーサン・ホーク主演である。ウィキペディアによれば批評家からは非常に肯定的に評価された映画との…

團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉

『團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉』 戸板康二 ☆☆☆☆ 和製ミステリ史上名作の誉れ高い「中村雅楽」シリーズを読んでみようと思い立ち、文庫版全集の第一巻を買った。これはすでに有名だった歌舞伎評論家の戸板康二氏が、江戸川乱歩に「ミステリを書いて…

アクトレス ~女たちの舞台~

『アクトレス ~女たちの舞台~』 オリヴィエ・アサイヤス監督 ☆☆☆★ 2014年公開の、仏=伊=スイス合作映画をNetflixで鑑賞。『パーソナル・ショッパー』でオリヴィエ・アサイヤス監督に興味を持ったので、その前作であるこの映画も観てみた。例によって邦題…

三つの物語

『三つの物語』 フローベール ☆☆☆☆☆ これまで旧かなづかいの岩波文庫版(絶版)しか持っていなかった『三つの物語』が、光文社古典新訳文庫で出たことを知り入手した。フローベール作品中、私がもっとも好きな中篇集である。現代かなづかいになって、ぐっと…

スラムドッグ$ミリオネア

『スラムドッグ$ミリオネア』 ダニー・ボイル監督 ☆☆☆☆ 2009年のアカデミー作品賞を受賞した映画で、前々から名前だけは知っていたがようやくiTunesのレンタルで鑑賞した。原作がインド人作家の小説なので舞台はインドだが、監督は『127時間』や『スティー…

突然ノックの音が

『突然ノックの音が』 エトガル・ケレット ☆☆☆☆ エトガル・ケレットはイスラエルの作家で、小説以外にも映画やテレビの脚本を書いている人らしい。初めて知った作家だが、なかなか面白かった。 本書に収録されているのはどれも3~6ページぐらいの超短篇ばっ…

新・猿の惑星

『新・猿の惑星』 ドン・テイラー監督 ☆☆☆★ 最初の「猿の惑星」シリーズの三作目を、iTunesのレンタルで鑑賞。いやー懐かしかった。これを昔TVの洋画番組で観たのが、私の「猿の惑星」シリーズ初体験だったのである。 その後一番有名な第一作『猿の惑星』を…

ローズマリーの赤ちゃん

『ローズマリーの赤ちゃん』 アイラ・レヴィン ☆☆☆☆ 先日映画のブルーレイを買って再見し、面白かったので、原作小説を読み返してみた。週末に一気読みしたが、やっぱり面白い。典型的なジェットコースター型エンタメ小説で、文体は簡潔、話の展開はスピーデ…

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー

『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』 ロン・ハワード監督 ☆☆ 去年映画館で観たが、Netflixで観れるようになったので再見。この映画は思ったほど売れず、そのせいでスターウォーズのスピンアウト作を毎年リリースする計画が白紙に戻ったという、いさ…

こんなに面倒くさいチップの話の続き

前回の続きで、今日もチップの話だ。 もうこの際全部言わせてもらうが、美容院のチップも面倒くさい。美容院では髪を切る人、シャンプーする人、など担当が分かれているので、本当はそれぞれ別々にあげなければいけないらしい。 美容院で観察していると、ア…

こんなに面倒くさいチップの話

日本人が海外旅行した時の面倒なことトップ3に確実にランクインするのは、チップ制度だろう。原則(特殊な場所を除いて)チップ制度というものがない日本人にとって、このややこしいシステムはまったく頭痛の種だ。どんな時に払うべきでどんな時にいらないの…

万引き家族

『万引き家族』 是枝裕和 ☆☆☆★ 米国のiTunesでレンタルできることを発見し、さっそく鑑賞。英語のタイトルは「Shoplifters」。パルムドールを獲ったし、大好きな是枝監督作品ということで期待して観た。結果、なかなか見ごたえはあったが同時に「うーんこれ…