2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

レモン畑の吸血鬼

『レモン畑の吸血鬼』 カレン・ラッセル ☆☆☆★ アメリカの作家カレン・ラッセルの短篇集。タイトルからもお分かりの通り遊び心があるポップでシュールな短篇が多く、たとえば表題作は年老いた吸血鬼夫婦の話だし、糸を吐くクリーチャーに変えられた製糸工場の…

火垂るの墓

『火垂るの墓』 高畑勲監督 ☆☆☆☆☆ 二度と観るまいと思っていた『火垂るの墓』を、ついまた観てしまった。前観たのは確か大学生の頃だったと思う。御多分にもれずあまりの悲しさに鬱状態に陥り、こんな悲しい映画はもう二度と観るまいと心に誓ったのだが、そ…

安南ー愛の王国

『安南 ー 愛の王国』 クリストフ・バタイユ ☆☆☆☆☆ 久しぶりに再読したが、本書は何度読んでも初読時の新鮮な魅惑と美しさを失わない稀な小説の一つである。フランスの作家クリストフ・バタイユのデビュー作で、1993年発表。作者はこれを書いた時若干20歳だ…

家族を想うとき

『家族を想うとき』 ケン・ローチ監督 ☆☆☆☆☆ 『わたしは、ダニエル・ブレイク』のケン・ローチ監督の新作を、日本からブルーレイを取り寄せてようやく観ることができた。英語だからアメリカで買っても良かったのだが、日本の方が一か月ほどリリースが早かっ…

聖女ジャンヌと悪魔ジル

『聖女ジャンヌと悪魔ジル』 ミシェル・トゥルニエ ☆☆☆☆☆ ミシェル・トゥルニエが1983年に発表した『聖女ジャンヌと悪魔ジル』は200ページ程度の中篇小説で、百年戦争を背景にジャンヌ・ダルクとジル・ド・レの運命の交錯を描く小説である。ジャンヌ・ダルク…

ポルトガル短篇小説傑作選 よみがえるルーススの声

『ポルトガル短篇小説傑作選 よみがえるルーススの声』 ルイ・ズィンク+黒澤直俊・編 ☆☆☆☆☆ 本書は20世紀後半以降のポルトガル文学のアンソロジーで、編者によればこれまで十分に紹介されて来なかったポルトガル文学を本格的に紹介しようという初の試みであ…