2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

不毛地帯

『不毛地帯』 山本薩夫監督 ☆☆☆★ これも『暖簾』と同じく山崎豊子原作。1976年公開、3時間の大作で、DVDで観ると途中で休憩が入る。 物語の題材は商社の仁義なきビジネス戦争だけれども、ただビジネス界が舞台になっているだけでなく、主人公が商社マンにな…

モラルの話

『モラルの話』 J・M・クッツェー ☆☆☆☆☆ 有名なノーベル賞作家のクッツェーだが、私はこれまで『恥辱』しか読んだことがなかった。『恥辱』はちょっとミラン・クンデラに近い味があるアイロニックな小説で、部分部分は面白かったけれども全体のストーリーが…

愛の昼下がり

『愛の昼下がり』 エリック・ロメール ☆☆☆★ しばらく前に買ったロメールのブルーレイ・ボックスで、「六つの教訓話」シリーズの最終話『愛の昼下がり』を鑑賞した。本作はまず「プロローグ」と題された部分があって、その後本編の物語に入っていくが、そのプ…

アルファ系衛星の氏族たち

『アルファ系衛星の氏族たち』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆ ディック中期のSF小説、『アルファ系衛星の氏族たち』を再読。これは『高い城の男』の後、『火星のタイム・スリップ』と同時期の発表で、すでにディック独特の個性は確立された時期の作品である。…

『涙』 パスカル・キニャール ☆☆☆★ 『約束のない絆』に続いて、キニャールの小説『涙』を読了。これは現代小説ではなく、歴史小説である。 とは書いてみたものの、しかしこれは、本当に小説なのだろうか。普通に私達が「小説」と思っているもの、つまりスト…