お知らせ

こんにちは、内野サトルです。 2019年に立ち上げて、これまでゆるゆると運営してきたこのブログ「ハッピーエンド急行」ですが、このあたりでそろそろ手じまいとさせていただこうと思います。 私自身、今年9月に日本に帰国してから身の回りの状況が激変し、ま…

福家警部補の追求

『福家警部補の追求』 大倉崇裕 ☆☆☆★ 刑事コロンボ大好き人間である私は以前このシリーズの『挨拶』『再訪』『報告』をご紹介したが、その時にこれ以降はまだ文庫化されてないので読んでないと書いた。このたび四作目『追求』がめでたく文庫になったので、さ…

「重複コンテンツ」削除のお知らせ

突然ですがお知らせです。 長いことブログをやっていながら今まで知らなかったのですが、自分で書いた記事であっても複数のサイトに載せていると「重複コンテンツ」と見なされ、Google先生にペナルティをくらう可能性があるとのこと。 人の文章をコピペする…

リャマサーレス短篇集

『リャマサーレス短篇集』 フリオ・リャマサーレス ☆☆☆☆☆ 待ちに待ったリャマサーレスの短篇集。これまで読んだ『黄色い雨』『狼たちの月』『無声映画のシーン』いずれも名作揃いだったのでもちろん大きく期待していたのだが、その期待はまったく裏切られな…

予告犯

『予告犯』 中村義洋監督 ☆☆★ アマプラで鑑賞した。伊坂幸太郎原作ものを得意とする中村監督だが、今回は漫画原作らしい。私は読んだことがない。 あらすじをざっと説明すると、ネット上に炎上した人間を制裁するシンブンシ(生田斗真)なる男が出現する。彼…

残月記

『残月記』 小田雅久仁 ☆☆☆ 知らない作家さんだったが、Amazonの作品紹介とカスタマーレビューで絶賛されていたので読んでみた。絶賛とはつまり「なんと豊かな物語性」「打ちのめされた」「絶句という言葉でも追いつけない読書体験」「もう以前と同じように…

孤狼の血 LEVEL2

『孤狼の血 LEVEL2』 白石和彌監督 ☆☆☆ 日本に帰国して驚いたことの一つに、アマプラで無料鑑賞できる映画・TV番組のラインナップの充実ぶりがある。ここまで色んなものがタダで(つまりアマプラの会費だけで)観れるとは思っていなかったので、「え、これも…

俺ではない炎上

『俺ではない炎上』 浅倉秋成 ☆☆☆★ 最近SNSを題材にした映画や小説が多いが、これもその一つ。なんだか不思議なタイトルだが、要するに何の心当たりもないのにいきなり殺人事件の犯人と名指しされ、SNSで大炎上した男が「え、なんで!?」とパニクる小説であ…

冤罪法廷

『冤罪法廷(上・下)』 J・グリシャム ☆☆☆☆ 久しぶりにグリシャムの新作本を買った。しかも私が好きな冤罪ものだ。期待感に胸を膨らませて読み始めたが、どうも思った感じと違う。面白くないわけじゃないけれども、私が知っているこれまでのグリシャム本と…

眠狂四郎女地獄

『眠狂四郎女地獄』 田中徳三監督 ☆☆☆ 眠狂四郎シリーズ第10作目。市川雷蔵の狂四郎シリーズは全部で12作なので、かなり終わりの方である。本作が公開された1968年に雷蔵の癌罹患が発覚。そして翌年の1969年、この稀代の俳優は逝去する。享年37歳。それを知…

犯人に告ぐ3 紅の影

『犯人に告ぐ3 紅の影』 雫井脩介 ☆☆☆☆ あの素晴らしく面白かった『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』の続編。前作で斬新かつ緻密な知能犯ぶりを見せつけ、結局最後まで逃げ切ったリップマンこと淡野と巻島が、本書でついに対決する。いやが上にも期待感が高まってし…

マルサの女2

『マルサの女2』 伊丹十三監督 ☆☆☆☆ 久しぶりに手持ちのDVDを引っ張り出して鑑賞。前作『マルサの女』は脱税者と国税局査察部の戦いというこれまでにない題材、徹底したリサーチにもとづく圧倒的情報量と蘊蓄、そして達者な演技陣による芝居の妙味で冴えたエ…

赤い魚の夫婦

『赤い魚の夫婦』 グアダルーペ・ネッテル ☆☆☆☆★ メキシコの作家の短篇集を読了。人間のドラマを、何かしら人間以外の生き物と絡めて描いた短篇が五つ収録されている。面白い趣向だ。生き物とは魚、昆虫、猫、菌類、蛇などでとても幅広いが、ストーリーとの…

眠狂四郎多情剣

『眠狂四郎多情剣』 井上昭監督 ☆☆☆ このところ映画といえば眠狂四郎シリーズのことばかり書いているが、自分で所有するDVDを取り出して順に再見しているのでこうなっている。別に熱狂的なファンじゃないのでDVDもいくつかしか持っていないが、初見時はスト…

ル・クレジオ、映画を語る

『ル・クレジオ、映画を語る』 ル・クレジオ ☆☆☆☆ 本書はタイトル通り、イタリアのノーベル賞作家ル・クレジオが映画への愛を語る本である。これぐらいビッグな作家が映画について情熱的に語る文章を読むのは言うまでもなく、書物と映画を同時に愛する私のよ…

星の時

『星の時』 クラリッセ・リスペクトル ☆☆☆☆★ 作者は1920年にウクライナで生まれ、ブラジルに移住し、ポルトガル語で数々の作品を書き、1977に死去した女流作家である。本書はそのクラリッセ・リスペクトルが発表した最後の小説で、著者が死去する直前の1977…

雲をつかむ死

『雲をつかむ死』 アガサ・クリスティー ☆☆☆★ 中期のポアロものを再読。この『雲をつかむ死』は有名な『三幕の殺人』や『ABC殺人』と同時期の作品で、つまりクリスティーの脂の乗り切った時期に書かれた作品である。が、そのわりにはあまりメジャーでもない…

眠狂四郎無頼控 魔性の肌

『眠狂四郎無頼控 魔性の肌』 池広一夫監督 ☆☆☆☆ 日本への帰国準備で多忙をきわめているため11日ぶりの更新になってしまった。これはシリーズ第9作目で、先にレビューした『眠狂四郎無頼剣』の次の作品である。 『無頼剣』の監督は三隅監督だったが本作は池…

十三の物語

『十三の物語』 スティーヴン・ミルハウザー ☆☆☆☆☆ 先週末はグランド・キャニオンへ旅行していたせいで更新できなかった。毎日朝の4時や5時に起床して日の出を眺めたりしていたせいで、旅行から帰ってきた時はものすごい疲労感だったが、その甲斐はあったと…

地球の中心までトンネルを掘る

『地球の中心までトンネルを掘る』 ケヴィン・ウィルソン ☆☆☆★ 今まだ40代ぐらいの、現役バリバリのアメリカ人作家の短篇集。いわゆるアンリアリズム系の奇想作家で、本書には祖母の代理業の話「替え玉」、自然発火で人間が燃えてしまう「発火点」、若い男女…

福家警部補の挨拶

『福家警部補の挨拶』 大倉崇裕 ☆☆☆★ 福家警部補シリーズの第一弾短篇集を再読。このシリーズ、私は最初に第三短篇集の『福家警部補の報告』を読み、遡って第一短篇集の本書を読み、次に第二短篇集の『福家警部補の再訪』を読んだ。次々とそこまで読んだのは…

眠狂四郎無頼剣

『眠狂四郎無頼剣』 三隅研次監督 ☆☆☆☆★ 所有するDVDで再見。市川雷蔵の眠狂四郎シリーズ第八作目である。主な出演者は市川雷蔵、天地茂、藤村志保。 これはシリーズの中でも傑作と評されている作品で、特徴としては、眠狂四郎シリーズにしてはエロが控え目…

茗荷谷の猫

『茗荷谷の猫』 木内昇 ☆☆☆☆ 所有する文庫本で再読。アマゾンの紹介文には「幕末から昭和にかけ、各々の生を燃焼させた名もなき人々の痕跡を掬う名篇9作」とある。要するに市井の人々の人生の断片を描く連作短篇集なのだが、各短篇の味わいはそれぞれ似てい…

大人のための残酷童話

『大人のための残酷童話』 倉橋由美子 ☆☆☆ 本書はタイトル通り、古今東西の童話、お伽噺のパロディ集である。グリム童話やギリシャ神話のような西欧のものから中国、日本まで幅広くカバーしていて、日本のものでは「かちかち山」や「かぐや姫」みたいな超メ…

伊賀忍法帖

『伊賀忍法帖』 山田風太郎 ☆☆☆★ 『江戸忍法帖』に続いて『伊賀忍法帖』を再読。これも勧善懲悪色が強く、爽やかな青年が主人公で、一人対多数の対決フォーマットである点が『江戸忍法帖』と似ている。が、エログロ色は強い。というか、要するに忍法帖シリー…

生まれるためのガイドブック

『生まれるためのガイドブック』 ラモーナ・オースベル ☆☆☆☆ ラモーナ・オースベルはアメリカのサンタフェ出身で、カリフォルニア在住の作家である。本書は「誕生」「妊娠」「受胎」「愛」と四つのセクションに分かれ、それぞれが二~三篇の短篇で構成されて…

刑事ジョン・ブック 目撃者

『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ピーター・ウィアー監督 ☆☆☆☆ ハリソン・フォード主演の有名作をHBO Maxで観た。過去、中途半端に鑑賞したことは何度もあるけれども、最初からきっちり観たのは今回初めてだ。ははあ、こんな話だったのかとようやく腑に落ちた…

アラバスターの壺/女王の瞳

『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短篇集』 ルゴーネス ☆☆☆☆ 光文社古典新訳文庫から出ているルゴーネスの短篇集を読了。ルゴーネスといえば国書刊行会の『アルゼンチン短篇集』に収録されている「イスール」しか読んだことがなかったが、この短…

江戸忍法帖

『江戸忍法帖』 山田風太郎 ☆☆☆★ 山田風太郎が名作『甲賀忍法帖』の次に書いた、忍法帖シリーズの第二弾。『江戸忍法帖』というなんだか適当なタイトルの本書は、忍法帖の中でもかなりマイルドな内容であり雰囲気である。一作目にしてすべてにとんがりまくっ…

キャリー(小説)

『キャリー』 スティーヴン・キング ☆☆☆★ 本棚の整理をしていて出てきた古い文庫本を再読した。ご存知、モダンホラーの帝王キングのデビュー作である。が、そんな記念すべき作品の割には、キング・ファンの話題に上ることもあんまりない地味な存在だ。デ・パ…