2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

最終講義(その2)

(前回の続き) それから第五講。本書のハイライトというべき章であり、ここで展開される考察に私は感動した。感心でも敬服でもなく、感動したのである。考察や論説で感動させられたのは、ミラン・クンデラ以来かも知れない。 ここで語られるのは、学びとは…

最終講義(その1)

『最終講義』 内田樹 ☆☆☆☆☆ 最近内田樹氏の著作を立て続けに五、六冊読んだ。『困難な成熟』を読んだら面白くて止まらなくなってしまったのだが、この人は元・神戸女学院大学教授(今は名誉教授)で、フランス文学者で、エマニュエル・レヴィナスに師事し、…

女の一生

『女の一生』 野村芳太郎監督 ☆☆★ 日本版DVDを購入して鑑賞。1967年の作品で、野村監督のフィルモグラフィーでは『拝啓天皇陛下様』(1963年)『続拝啓天皇陛下様』(1964)の後、『影の車』(1970)や『砂の器』(1974年)の前になる。脚本は野村芳太郎に加えて森…

孤狼の血(小説)

『孤狼の血』 柚月裕子 ☆☆☆★ 役所広司主演の映画がかなり熱くて面白かった『孤狼の血』、原作はどんなだろうと思って読んでみた。柚月裕子氏のミステリはこれまで佐方貞人シリーズなどを読んだが、どちらかというと静謐、きめ細やかというイメージで、あの映…

赤い天使

『赤い天使』 増村保造監督 ☆☆☆☆☆ 日本版DVDを購入して鑑賞。名作だという評判は前から知っていたが、かなりハードな内容だというので観るのをためらっていた。前にやはり増村監督+若尾文子の『清作の妻』を観てどっと疲れたので、心身ともに余裕がある時に…

ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集

『ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集』 村上春樹・編訳 ☆☆☆☆ 久しぶりに村上春樹訳のフィッツジェラルド本が出た、ということで早速購入。今回は「ある作家の夕刻」というタイトル通り、フィッツジェラルドがその「絶頂期」を過ぎ、後期に発表し…

男はつらいよ 寅次郎の縁談

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』 山田洋次監督 ☆☆☆☆ 日本版DVDを購入して鑑賞。シリーズ第46作目、マドンナは松坂慶子。シリーズ最終作『寅次郎紅の花』の二つ前の作品である。今回初見。 『男はつらいよ』シリーズは終盤になると満男が主人公のストーリーが…

データの見えざる手

『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』 矢野和男 ☆☆☆☆★ 人間の幸福度はセンサーで測れる、という売り文句に興味を惹かれて買ってみた。そんなことが本当に可能なのだろうか、もし可能だとしたらどんな結果が出るのだろう…

最高殊勲夫人

『最高殊勲夫人』 増村保造監督 ☆☆★ 日本版DVDで鑑賞。1959年公開作品。増村監督+若尾文子のロマンティック・コメディということで『青空娘』的な映画を期待したのだが、私見では『青空娘』の面白さには及ばなかった。テイストはよく似ているが、ストーリー…