2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

タブッキをめぐる九つの断章

『タブッキをめぐる九つの断章』 和田忠彦 ☆☆☆☆☆ アントニオ・タブッキは私がもっとも敬愛する作家で、おそらく古今東西あらゆる作家の中で一番のフェイバリットなのだが、これまで彼に関する評論の類はまったく読んだことがなかった。あまりにも愛着と思い…

驟雨

『驟雨』 成瀬巳喜男監督 ☆☆☆☆☆ ずっと前から観たいと思っていた成瀬監督の『驟雨』、日本版DVDが出たのでさっそく入手した。あの傑作『めし』と同じように原節子が庶民的な主婦を演じるこの映画は『めし』の五年後、1956年の公開である。『めし』は原節子と…

ブルックリン・フォリーズ

『ブルックリン・フォリーズ』 ポール・オースター ☆☆☆☆☆ ポール・オースターは私の中でいまひとつイメージが定まらない作家で、初期の『幽霊たち』『最後の物たちの国で』の頃はカフカ的不条理感を漂わせた幻想寓話の作家という、どちらかというと線が細い…

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』 リチャード・カーティス監督 ☆☆☆☆☆ この映画はもう4、5回観たが、観るたびに自分の中で評価が上がっていく。誰が観ても大傑作という映画ではないかも知れない、地味といえば地味だし、ゆるいといえばゆるい。…

よそ者たちの愛

『よそ者たちの愛』 テレツィア・モーラ ☆☆☆☆ 著者テレツィア・モーラはハンガリー生まれでドイツに移住した女流作家。本書には以下10篇の短篇、「魚は泳ぐ、鳥は飛ぶ」「エイリアンたちの愛」「永久機関」「マリンガーのエラ・ラム」「森に迷う」「ポルトガ…

『恋』 ジョセフ・ロージー監督 ☆☆☆☆★ 手持ちの日本版DVDで久しぶりに再見した。やっぱりこれは深みとコクがあるいい映画である。パルムドール受賞作と聞いてつい構えてしまった初見時は、きれいでエレガントだけどパルムドールにしては強烈でも衝撃的でもな…