2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

真昼の悪魔

『真昼の悪魔』 遠藤周作 ☆☆☆☆ アンソロジー『事件の予兆』収録の「生きていた死者」が面白かったので遠藤周作をもっと読みたくなったのだが、以前読んだ『沈黙』はあまりにメンタル的にきつかったため、なるべくキリスト教色が薄いやつにしようと思って本書…

マイル81 わるい夢たちのバザールⅠ

『マイル81 わるい夢たちのバザールⅠ』 スティーヴン・キング ☆☆☆★ ごく最近まで、スティーヴン・キングは私にとってもはや過去の作家だった。『ミスター・メルセデス』にがっかりして以来新作はまったく読まなくなったし、関心もなくしていた。たまに『シャ…

事件

『事件』 大岡昇平 ☆☆☆☆ 映画はDVDも所有しているが、原作を読んだのは今回初めて。大岡昇平は「サッコとヴァンゼッティ」など面白い裁判ものを書いているので、この長編も傑作なのではないかと期待して読んだ。 しかしこの事件、いわゆる法廷ミステリの視点…

ベスト・ストーリーズ Ⅲ カボチャ頭

『ベスト・ストーリーズ Ⅲ カボチャ頭』 若島正・編 ☆☆☆☆☆ この「ベスト・ストーリーズ」シリーズは全部で三巻出ていて、アメリカの文芸誌「ニューヨーカー」に掲載された作品から傑作・名作を選出したアンソロジーである。最終巻である三巻目は1990年代から…

男はつらいよ 私の寅さん

『男はつらいよ 私の寅さん』 山田洋次監督 ☆☆☆☆ 所有するDVDで久しぶりに鑑賞した。これはシリーズ第12作目で、マドンナは岸恵子。まだまだ初期の作品だ。 本作は大きく二部構成になっていて、前半はとらや一同が九州旅行に出かけ、寅がひとり柴又で留守番…

項羽と劉邦

『項羽と劉邦(上・中・下)』 司馬遼太郎 ☆☆☆☆ 司馬遼太郎の戦国時代ものを大部分読み尽くしたので、他に面白いものはないかと思ってこの『項羽と劉邦』に手を伸ばした。これは古代中国の物語で、初めて中国統一をなしとげた大帝国・秦が滅びつつある頃、次…