2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

沈んだ世界

『沈んだ世界』 J. G. バラード ☆☆☆★ バラードの初期作品を読了。SFとしては古典の部類だろうが初めて読んだ。知らない人のために簡単に説明すると、バラードは1950年代にデビューして60年代から70年代にかけて活躍したSF作家である。SFといっても、彼はいわ…

汚名

『汚名』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆☆☆☆ なぜかiTunesにもアマゾン・プライムにもレンタルがないので、英語版ブルーレイを購入して久しぶりに鑑賞した。主演はケーリー・グラントとイングリッド・バーグマン。1946年公開のモノクロ映画で、ヒッチ映…

管仲

『管仲(上・下)』 宮城谷昌光 ☆☆☆☆ 知り合いから借りた本で読了。中国の歴史小説である。宮城谷昌光は前に短篇集『沈黙の王』と長編『天空の舟―小説・伊尹伝』を読んで、いずれも神話的というか伝奇小説色が強かったが、本書は文献に基づいて歴史上の人物…

The Foreigner

『The Foreigner』 マーティン・キャンベル監督 ☆☆☆☆ 所有するブルーレイで再見。これは2017年に映画館で観て、結構いいじゃないかと思ってブルーレイを購入してたまに観ているのだが、なぜか日本では今年の5月にようやく公開らしい。なんでこんなに遅いのだ…

日本文学100年の名作第2巻1924-1933 幸福の持参者

『日本文学100年の名作第2巻1924-1933 幸福の持参者』 池内紀/松田哲夫/川本三郎・編集 ☆☆☆☆ 「日本文学100年の名作」シリーズの第二巻目、『幸福の持参者』を読了。私は現代からだんだん昔にさかのぼる方式でこのシリーズを読み進めているが、昔のものは…

パーソナル・ショッパー

『パーソナル・ショッパー』 オリヴィエ・アサイヤス監督 ☆☆☆☆ Nextfixで鑑賞。ちょっとスタイリッシュなホラー映画かなと思って時間つぶしのつもりで観たら、予想を覆される結果となった。これはゴースト・ストーリーではあるが、ホラー映画ではない。とい…

ジャッキー・チェンに間違われた話

絶対の自信をもって断言するが、私はジャッキー・チェンには似ていない。似ても似つかないと思うし、日本人でそんなことをいう人は皆無のはずだ。が、西洋人にはやはり東洋人の顔がどれも似て見えるのかも知れない。子供だったらなおさらだ。以下は以前、私…

にごりえ

『にごりえ』 今井正監督 ☆☆☆ 日本版DVDで鑑賞。1953年公開のモノクロ映画である。かなり古い。今井正監督の映画は『不信のとき』ぐらいしか観ていないが、これは前のブログにレビューを書いたようにとても面白かったし、おまけにこの『にごりえ』は昭和28年…

隠花の飾り

『隠花の飾り』 松本清張 ☆☆☆☆★ 松本清張の短編集を読了。短編集ということで、有名な「顔」「疑惑」みたいないつもの社会派ミステリを予想したが、これはだいぶ趣きが違う。一篇一篇が特に短い。前読んだ『憎悪の依頼』に似た雰囲気である。 晩年に書かれた…

アウトレイジ・ビヨンド

『アウトレイジ・ビヨンド』 北野武監督 ☆☆☆☆ 所有している日本版ブルーレイで再見。アウトレイジ三部作の二作目だが、私はこれがシリーズ中もっとも出来が良いと思う。一作目がバイオレンスをかなり戯画的に、おふさげ気味に扱っていたのに対し、よりストー…

死ぬことと見つけたり

『死ぬことと見つけたり(上・下)』 隆慶一郎 ☆☆☆☆☆ 隆慶一郎の時代小説の面白さは、これまで『影武者徳川家康』『吉原御免状』『かくれさと苦界行』『柳生非情剣』あたりを読んで大体分かったつもりでいたが、この『死ぬことと見つけたり』でまだまだ甘か…