2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ロスト・ケア

『ロスト・ケア』 葉真中顕 ☆☆☆★ 『絶叫』が強力だった葉真中顕氏のデビュー作『ロスト・ケア』を読んだ。日本ミステリー大賞新人賞受賞作である。 テーマは介護問題。深刻で出口の見えない、社会問題の闇を掘り下げていくスタイルは『絶叫』とまったく同じ…

悪魔のシスター

『悪魔のシスター』 ブライアン・デ・パルマ監督 ☆☆ iTunesのレンタルで鑑賞。デ・パルマ監督のごく初期のフィルムで、主演は78年版『スーパーマン』でクリストファー・リーヴの相手役だったマーゴット・キダー。マーゴット・キダーは後年重度の神経症に苦し…

表象詩人

『表象詩人』 松本清張 ☆☆☆ これも中篇二つの松本清張本である。「山の骨」と「表象詩人」が収録されている。どちらもミステリとしてはかなり変化球で、渋くて地味な作品だ。本書は筋金入りの松本清張マニア向け、と言っていいと思う。 まず「山の骨」は、モ…

続拝啓天皇陛下様

『続拝啓天皇陛下様』 野村芳太郎監督 ☆☆☆ 『拝啓天皇陛下様』がすごく良かったので、続編も観ようと思って日本版DVDを取り寄せた。前作の主人公ヤマショウは死んでいるので、もちろんこれは別人の話である。と言っても演じるのは渥美清だし、よく似たキャラ…

座席ナンバー7Aの恐怖

『座席ナンバー7Aの恐怖』 セバスチャン・フィツェック ☆☆ 聞いたことがない著者名だったが、飛行機サスペンスものと聞いて買った。何を隠そう、私は飛行機サスペンスには目がない。アーサー・ヘイリーの『大空港』や超有名作『シャドー81』はもちろん、キン…

カビリアの夜

『カビリアの夜』 フェデリコ・フェリーニ監督 ☆☆☆☆☆ 前々から観たいと思いながらソフトが入手できず、涙をのんで我慢していた『カビリアの夜』。ついに日本版ブルーレイが発売されたのでさっそく取り寄せた。私の大好きな『道』と同じくジュリエッタ・マシ…

生けるパスカル

『生けるパスカル』 松本清張 ☆☆☆☆ またしても松本清張だが、とりあえず読みたいものに迷った時に松本清張は重宝するのだからしかたがない。どれをとってもそれなりの面白さが保証されていて、しかもいくら読んでもまだ未読本がある。ありがたいことだ。松本…

死霊伝説

『死霊伝説』 トビー・フーパー監督 ☆☆☆★ スティーヴン・キング『呪われた町』の映像化作品『死霊伝説』を、iTunesのレンタルで鑑賞した。いかにも安っぽい邦題だが、原題は「セイラムズ・ロット」でキングの原作と同じ。 もともとTV番組として1979年に制作…

クネレルのサマーキャンプ

『クネレルのサマーキャンプ』 エトガル・ケレット ☆☆☆☆☆ 短篇集『突然ノックの音が』がとても面白かったので、エトガル・ケレットの『クネレルのサマーキャンプ』を入手。順番としてはこっちの方が初期の短篇集になる。31篇収録されている。 『突然ノックの…

アベンジャーズ エンドゲーム

『アベンジャーズ エンドゲーム』 アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ監督 ☆☆☆☆★ もちろん公開時に映画館で観たが、今回ブルーレイを購入してキャプション付きでじっくり鑑賞。やっぱり面白かった。言うまでもなく、これはフェリーニでもロメールでも黒澤で…

刑罰

『刑罰』 フェルディナント・フォン・シーラッハ ☆☆☆☆☆ シーラッハの新作短篇集を入手。アマゾンの紹介文は「短篇の名手が真骨頂を発揮した最高傑作!」とかなり煽り気味だ。確かに一作目の『犯罪』はまごうかたなき大傑作だったけれども、私見ではこのところ…