2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

戻り川心中

『戻り川心中』 連城三紀彦 ☆☆☆☆ ちょっと前に読んだ『夜よ鼠たちのために』の、きわめて人工的な超絶技巧の世界が面白かったので、名作の誉れ高いこの短篇集に手を伸ばしてみた。ただの短篇集ではなく、一つのモチーフと美意識のもとに書かれた連作短篇集で…

すばらしき世界

『すばらしき世界』 西川美和監督 ☆☆☆☆★ 日系レンタルビデオ店で格安DVDを買ってきて鑑賞。西川監督は映画の妙は多義性にこそある、と知り尽くしている作家で、だからいつもそうであるようにこの作品でも善悪や正誤の境界をとことんぼかしていく。観客は映画…

恋しくて

『恋しくて』 村上春樹・編訳 ☆☆☆☆ 以前から持っている中央文庫のアンソロジーを再読。村上春樹が編んだ恋愛小説のアンソロジーである。 さすがにハイレベルな作品が収録されていて、普段は恋愛小説をほとんど読まない私でも十分愉しむことができた。収録作…

春の祭典

『春の祭典』 アレホ・カルペンティエール ☆☆☆★ 本書はカルペンティエールの最後から二番目の長編小説である。が、実は最後の長編『ハープと影』の方が先に出来上がっていたが、著者の思惑によって順番が入れ替えられたという。本書の方を先に発表したいとい…