2019-01-01から1年間の記事一覧

変わったタイプ

『変わったタイプ』 トム・ハンクス ☆☆☆☆★ 著者名にご注目いただきたい。トム・ハンクス。そう、これはあのハリウッド俳優、トム・ハンクスが書いた小説集なのである。短篇が17収録されている。 アマゾンのレビューが悪くなかったので買ってみたのだが、正直…

ヒドゥン

『ヒドゥン』 ジャック・ショルダー監督 ☆☆☆☆ 所有するDVDで鑑賞。1987年公開のSF映画で、内容はボディ・スナッチャー+ターミネーター+刑事もの、といった雰囲気だ。要するに宇宙からやってきた生物が人間の体に次々と寄生して暴れ回り、それをFBIエージェ…

沈んだ世界

『沈んだ世界』 J. G. バラード ☆☆☆★ バラードの初期作品を読了。SFとしては古典の部類だろうが初めて読んだ。知らない人のために簡単に説明すると、バラードは1950年代にデビューして60年代から70年代にかけて活躍したSF作家である。SFといっても、彼はいわ…

汚名

『汚名』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆☆☆☆ なぜかiTunesにもアマゾン・プライムにもレンタルがないので、英語版ブルーレイを購入して久しぶりに鑑賞した。主演はケーリー・グラントとイングリッド・バーグマン。1946年公開のモノクロ映画で、ヒッチ映…

管仲

『管仲(上・下)』 宮城谷昌光 ☆☆☆☆ 知り合いから借りた本で読了。中国の歴史小説である。宮城谷昌光は前に短篇集『沈黙の王』と長編『天空の舟―小説・伊尹伝』を読んで、いずれも神話的というか伝奇小説色が強かったが、本書は文献に基づいて歴史上の人物…

The Foreigner

『The Foreigner』 マーティン・キャンベル監督 ☆☆☆☆ 所有するブルーレイで再見。これは2017年に映画館で観て、結構いいじゃないかと思ってブルーレイを購入してたまに観ているのだが、なぜか日本では今年の5月にようやく公開らしい。なんでこんなに遅いのだ…

日本文学100年の名作第2巻1924-1933 幸福の持参者

『日本文学100年の名作第2巻1924-1933 幸福の持参者』 池内紀/松田哲夫/川本三郎・編集 ☆☆☆☆ 「日本文学100年の名作」シリーズの第二巻目、『幸福の持参者』を読了。私は現代からだんだん昔にさかのぼる方式でこのシリーズを読み進めているが、昔のものは…

パーソナル・ショッパー

『パーソナル・ショッパー』 オリヴィエ・アサイヤス監督 ☆☆☆☆ Nextfixで鑑賞。ちょっとスタイリッシュなホラー映画かなと思って時間つぶしのつもりで観たら、予想を覆される結果となった。これはゴースト・ストーリーではあるが、ホラー映画ではない。とい…

ジャッキー・チェンに間違われた話

絶対の自信をもって断言するが、私はジャッキー・チェンには似ていない。似ても似つかないと思うし、日本人でそんなことをいう人は皆無のはずだ。が、西洋人にはやはり東洋人の顔がどれも似て見えるのかも知れない。子供だったらなおさらだ。以下は以前、私…

にごりえ

『にごりえ』 今井正監督 ☆☆☆ 日本版DVDで鑑賞。1953年公開のモノクロ映画である。かなり古い。今井正監督の映画は『不信のとき』ぐらいしか観ていないが、これは前のブログにレビューを書いたようにとても面白かったし、おまけにこの『にごりえ』は昭和28年…

隠花の飾り

『隠花の飾り』 松本清張 ☆☆☆☆★ 松本清張の短編集を読了。短編集ということで、有名な「顔」「疑惑」みたいないつもの社会派ミステリを予想したが、これはだいぶ趣きが違う。一篇一篇が特に短い。前読んだ『憎悪の依頼』に似た雰囲気である。 晩年に書かれた…

アウトレイジ・ビヨンド

『アウトレイジ・ビヨンド』 北野武監督 ☆☆☆☆ 所有している日本版ブルーレイで再見。アウトレイジ三部作の二作目だが、私はこれがシリーズ中もっとも出来が良いと思う。一作目がバイオレンスをかなり戯画的に、おふさげ気味に扱っていたのに対し、よりストー…

死ぬことと見つけたり

『死ぬことと見つけたり(上・下)』 隆慶一郎 ☆☆☆☆☆ 隆慶一郎の時代小説の面白さは、これまで『影武者徳川家康』『吉原御免状』『かくれさと苦界行』『柳生非情剣』あたりを読んで大体分かったつもりでいたが、この『死ぬことと見つけたり』でまだまだ甘か…

The Cakemaker

『The Cakemaker』 オフィル・ラウル・グレイツァ監督 ☆☆☆☆☆ iTunesのレンタルで鑑賞。邦題は『彼が愛したケーキ職人』だが、シンプルな「The Cakemaker」の方がずっといい。 イスラエル=ドイツ合作映画で、物語の舞台もベルリンとエルサレムである。ベルリ…

禁じられた恋の島(映画)

『禁じられた恋の島』 ダミアーノ・ダミアーニ監督 ☆☆☆★ 所有している日本版DVDで再見。これは数年前に日本に帰った時にDVD屋さんで発見し、「おお、こんなものが出ている!」と感動して買ってきたタイトルである。 前のブログで一度書いたけれども、モラン…

雪の日に傘をさす話

今週の水曜日に久しぶりにニューヨークに雪が降った。この冬はあまり雪が降らない。今回で多分三回目ぐらいだし、そもそもまだ大雪というものがない。もちろん、大雪やストームになると色々大変なので、ないに越したことはない。 水曜日に降った雪も、空から…

雁(小説)

『雁』 森鴎外 ☆☆☆☆☆ 前に別のブログで、豊田四郎監督版と池広一夫監督版の二つの『雁』の映画化を見比べてレビューを書いたことがあるが、こうなったら原作も読むしかないと思って読んでみた。一体あのメロドラマティックな物語がどう書かれているのか興味…

Searching

『Searching』 アニーシュ・チャガンティ監督 ☆☆☆☆ iTunesのレンタルで鑑賞。予告を見てなかなか面白そうだと思ったのだが、実際観てみると予想以上に良かった。韓国人一家が主役のスター不在の映画であること、SNSやインターネットが大きくフィーチャーされ…

カササギ殺人事件

『カササギ殺人事件(上・下)』 アンソニー・ホロヴィッツ ☆☆☆☆☆ うーむ、これは近年稀にみる大傑作かも知れない。前評判の高さは知っていたが、ここまでとは思わなかった。アマゾンの作品紹介やカスタマーレビューを読むと「アガサ・クリスティーを思わせ…

永い言い訳

『永い言い訳』 西川美和監督 ☆☆☆★ 日本版ブルーレイで再見。『ゆれる』『ディア・ドクター』などミステリアスな心理劇を得意とする西川監督の映画は、当たりはずれはあるけれどもどうしても気になって観てしまう。これまでの映画ではかなりトリッキーなシチ…

中国人の小さな女の子を見なかったかい?

90年頃のニューヨークで私が遭遇した、ちょっとした出来事について書きたい。まだ私がアメリカに来たばかりの頃の話だ。 ある週末の午後、私は友達の女性二人と一緒にイースト・ヴィレッジの映画館に行った。なんの映画だったかはもう覚えていないが、ハリウ…

光秀の定理

『光秀の定理』 垣根涼介 ☆☆☆☆ 先日読んだ『信長の原理』が大変面白かったので、今度は同じ作者の『光秀の定理』を読んだ。順序が逆になってしまったが、刊行の順番としてはこちらが先である。 本書もまた十分面白く、堪能できた。タイトル通り、今回の主人…

フロリダ・プロジェクト

『フロリダ・プロジェクト』 ショーン・ベイカー監督 ☆☆☆☆☆ Amazon Primeで鑑賞。傑作である。こんな映画がタダ同然で(会員になってさえいれば)観れるとは、贅沢な世の中になったものだなあ。 この映画の重要な特徴はそのミニマリズム的アプローチ、つまり…

インド人の大家と戦った話

(写真はホーボーケンの通りの光景。こんな感じのアパートが立ち並んでいる) ニューヨーク近郊でアパートを借りる時は、大家に気をつけた方がいい。と言っても気のつけようもないかも知れないけれども、少なくともアメリカには日本では考えられないようなと…

ラ・カテドラルでの対話

『ラ・カテドラルでの対話(上・下)』 バルガス・リョサ ☆☆☆☆☆ 分厚い岩波文庫上下巻で読了。リョサの代表作としてタイトルだけは昔から知っていたが、去年岩波文庫からこれが出るまで日本語版ハードカバーは入手困難で、アメリカに住んでいる私は読みたく…

知りすぎていた男

『知りすぎていた男』 アルフレッド・ヒッチコック監督 ☆☆☆☆ iTunesのレンタルで久しぶりに鑑賞。ヒッチコック映画の中でも5本の指に入る有名作だろう。主演はジェームズ・スチュアートとドリス・デイ。いわゆる「巻き込まれ型」スリラーの典型である。 妻と…

建築家

いささかなりとも建築の歴史と驚異に興味をお持ちの読者諸兄ならば、十九世紀フランスの建築家ベルトラン・ベルトランの名を必ずやご存知のことだろう。この一文は、一時期ダ・ヴィンチに伍する天才建築家としてもてはやされ、やがていくつかの忌まわしい噂…

セレブを見た話

ニューヨークで暮らしているとハリウッド・スターやロック・スターなど有名人を見かけることがあるか、と時々知り合いから聞かれるけれども、確かにそういうこともある。もちろん日常的にではない、ごくたまにである。 私の例でいうと、まずブルース・ウィリ…

前口上

こんにちは。プロバブリー商會代表、内野サトルです。「内野サトル」は本名ではありませんが、かなり本名に近いペンネームです。 プロバブリー商會はホームページに書いている通り、架空の団体であり、私の空想の中以外どこにも存在しない会社です。業務内容…