アブソリュートエゴなレビュー

クレールの膝

『クレールの膝』 エリック・ロメール監督 ☆☆☆☆☆ 所有するロメールのブルーレイ・ボックスから『クレールの膝』を初鑑賞。「6つの教訓話(Six contes moraux)」シリーズの5作目で、例によってロマンスと快楽こそ人生の目的、という享楽主義的キャラクター達…

天使のいる廃墟

『天使のいる廃墟』 フリオ・ホセ・オルドバス ☆☆☆☆ スペインの作家、フリオ・ホセ・オルドバスの『天使のいる廃墟』を読了。著者が生まれ育ち、今も住んでいるスペインのアラゴン州はメキシコによく似ているそうだが、本書もラテンアメリカ文学に非常に近い…

新座頭市物語 折れた杖

『新座頭市物語 折れた杖』 勝新太郎監督 ☆☆☆ 所有する座頭市ブルーレイ・ボックスから残り少ない未見作品を鑑賞。シリーズ24作目の「折れた杖」だが、これはシリーズ中初めての勝新太郎監督作品である。やはり監督をやらせても型破りなのか、出来の良し悪し…

バロウズという男

『バロウズという男』 ウィリアム・バロウズ ☆☆☆ かつてペヨトルエ房から出たバロウズのエッセイ集を再読。この本もいまや絶版らしいが、まあ一般の人々にあまり需要はないだろう。私もこの本を引っ張り出したのは十年以上ぶりだ。小説ではなくエッセイとい…

インフォーマント!

『インフォーマント!』 スティーヴン・ソダーバーグ監督 ☆☆☆☆ 所有しているブルーレイでソダーバーグ監督の『インフォーマント!』を再見。これはソダーバーグ監督の映画の中では人気がない方の作品と言っていいと思う。世間の評価もそれほど芳しくないと思…

豚の戦記

『豚の戦記』 ビオイ=カサレス ☆☆☆ ビオイ=カサレスの文庫本『豚の戦記』を再読。これは昔読んであまり記憶に残らず、今回ためしに再読したがやはり印象は薄かった。ビオイ=カサレスといえばどうしても『モレルの発明』『脱獄計画』などの奇々怪々な長編…

早春

『早春』 小津安二郎監督 ☆☆☆☆★ 所有するDVDボックスで再見。小津監督にしては割と暗い話なのであまり印象に残っていなかったが、あらためて観返すとやっぱり傑作だ。見ごたえ十分である。 特色としては主演俳優陣が池部良、淡島千景、岸恵子といつもの小津…

最後の証人

『最後の証人』 柚月裕子 ☆☆☆☆ 所有する文庫本で再読。これは佐方貞人シリーズの第一作目で、ここで初登場する主人公・佐方は弁護士である。元検事の弁護士という設定だが、二作目からは時間を遡って検事時代の話になる。今のところ、シリーズ中で弁護士時代…

Dolls

『Dolls』 北野武監督 ☆☆★ これまでちゃんと観たことがなかった唯一の北野武監督作品、『Dolls』をようやく日本版ブルーレイで鑑賞した。ちゃんとというのは、昔レンタルビデオで借りて1/3ぐらい観たところでビデオテープが止まり、どうしても先へ進まなくな…

小鳥の肉体 画家ウッチェルロの架空の伝記

『小鳥の肉体 画家ウッチェルロの架空の伝記』 ジャン=フィリップ・アントワーヌ ☆☆☆★ はるか昔に購入し、途中まで読んで投げ出していた本書を引っ張り出して再読。今度は完読した。タイトル通り、有名なルネサンス期の画家パオロ・ウッチェルロを題材にし…

カサブランカ

『カサブランカ』 マイケル・カーティス監督 ☆☆☆☆☆ 古いDVDも所有しているが、HBO Maxにあるのを見つけてつい再見。言わずと知れた名作にして、永遠のスターであるボギーとバーグマンの代表作『カサブランカ』。1943年のアカデミー賞で三部門受賞に輝いた超…

アマチュアたち

『アマチュアたち』 ドナルド・バーセルミ ☆☆☆ またしてもバーセルミ。『アマチュアたち』は発表順で言うと『哀しみ』の前、『口に出せない習慣、不自然な行為』の後だが、今回私が再読した順番では最後になった。 訳者二人による巻末の「あとがたり」によれ…

冬の少年

『冬の少年』 エマニュエル・カレール ☆☆☆☆ ずっと前に読んで本棚に埋もれていた一冊を引っ張り出して再読。アマゾンで検索しても出てこないので、もはや絶版なのだろう。たしかに派手ではないし小品という趣きの作品だが、私はなかなか味わい深い佳作だと思…

娘・妻・母

『娘・妻・母』 成瀬巳喜男監督 ☆☆☆☆☆ 日本版DVDを購入して初鑑賞。『女が階段を上る時』と同年の公開である。成瀬作品の中ではそれほど評価が高くないようなのでこれまで見逃していたが、観たら十分傑作だった。実際、公開当時は大ヒットしたらしい。考えて…

哀しみ

『哀しみ』 ドナルド・バーセルミ ☆☆☆★ 本棚の整理をしていたらバーセルミの本が何冊か出てきたので、このところ順番に読み返している。『口に出せない習慣、不自然な行為』の次は『哀しみ』である。基本的には『口に出せない習慣、不自然な行為』と同じくフ…

十日間の不思議

『十日間の不思議』 ☆☆☆☆ エラリイ・クイーン 本書は『災厄の町』『フォックス家の殺人』に続く、ライツヴィル・シリーズの第三作目である。ライツヴィルはニューヨーク郊外にある架空の町で、ここを最初に訪れた時、古風な街並みに魅了されたエラリイはこの…

安珍と清姫

『安珍と清姫』 島耕二監督 ☆☆☆☆ またまた若尾文子が出ている映画を観たくなり、『安珍と清姫』の日本版DVDを入手した。市川雷蔵も出ていて一粒で二度おいしいが、内容的には変わり種のようなので、もしかすると大ハズレかも知れないと警戒しながら観た。 有…

口に出せない習慣、不自然な行為

『口に出せない習慣、不自然な行為』 ドナルド・バーセルミ ☆☆☆☆ 昔ドナルド・バーセルミのナンセンスがかった軽やかで実験的な短篇にハマり、何冊か短篇集を集めたがその後ずっとご無沙汰だった。最近本棚の整理をしていた出てきたので久しぶりに手に取り、…

山の人魚と虚ろの王

『山の人魚と虚ろの王』 山尾悠子 ☆☆☆☆ 前に読んだ『飛ぶ孔雀』があんまり好きじゃなかったのでしばらく遠ざかっていた山尾悠子だが、やっぱり気になってこの本も買ってしまった。例によって函入りで、凝りに凝った美しい装幀である。もう本人も出版社も一般…

日本のいちばん長い日

『日本のいちばん長い日』 岡本喜八監督 ☆☆☆☆☆ 日本版ブルーレイを購入して鑑賞。前々から傑作だとは聞いていたが、三船敏郎が切腹する場面のジャケット写真がイヤで観るのを避けていた。大体岡本喜八監督は『斬る』のように洒脱で痛快な映画もある一方、『…

バロック協奏曲

『バロック協奏曲』 アレホ・カルペンティエール ☆☆☆☆★ 所有している文庫本で再読した。本書は水声社の「フィクションのエル・ドラード」シリーズでも出ているらしいが、私が持っているのは以前日本に帰国した時に大枚はたいて買ったサンリオ文庫版である。 …

野呂邦暢ミステリ集成

『野呂邦暢ミステリ集成』 野呂邦暢 ☆☆☆☆☆ 前に読んだ文芸ミステリ・アンソロジー『事件の予兆』で、掌編「剃刀」が印象的だった野呂邦暢のミステリ作品集を入手した。ミステリ作品といってもいわゆるミステリとは毛色が変わったものが多いので、「ミステリ…

美貌に罪あり

『美貌に罪あり』 増村保造監督 ☆☆☆☆★ 異常な映画『積木の箱』に続き、またしても増村監督+若尾文子の『美貌に罪あり』をDVDで鑑賞。このコラボの映画は一体どんなものが飛び出してくるかまったく予想がつかず、とてもスリリングだ。 さて、今回は少々事前…

推し、燃ゆ

『推し、燃ゆ』 宇佐美りん ☆☆☆★ 話題の芥川賞受賞作を読んでみた。いつもは賞を獲ったからといって購入したりはしないのだが、今回は「推し、燃ゆ」というタイトルのセンスにもしやと思って買った。新しい日本文学が登場したんじゃないか、つまり、従来の日…

きみのいもうと

『きみのいもうと』 エマニュエル・ボーヴ ☆☆☆☆☆ 『ぼくのともだち』が大変素晴らしかったので、それに続くボーヴの二作目『きみのいもうと』を入手、読了した。かなり上がっていた期待値もまったく裏切られなかった。『ぼくのともだち』同様、大して長くな…

積木の箱

『積木の箱』 増村保造監督 ☆☆☆★ 日本版DVDで鑑賞。またしても、増村監督+若尾文子コンビのトンデモ映画登場である。この二人が組んだ映画は本当にバラエティ豊かで、『清作の妻』『赤い天使』『妻は告白する』みたいな残酷美を湛えた芸術的な映画もあれば…

恋するアダム

『恋するアダム』 イアン・マキューアン ☆☆☆☆ マキューアンの新作が翻訳されたことを知って、さっそく入手。彼の小説は多少の出来不出来はあるが、チャレンジングで刺激的な題材という点では常に期待にこたえてくれる。本書もいつも通り、挑発的で現代的なテ…

フリック・ストーリー

『フリック・ストーリー』 ジャック・ドレー監督 ☆☆☆☆ 日本版ブルーレイを購入して鑑賞。1975年公開作品で、一時期(特に日本で)、美形俳優の代名詞として一世を風靡したアラン・ドロンもその人気に陰りが出てきた頃だというが、こうして見るとやっぱり十分…

片隅の人たち

『片隅の人たち』 常盤新平 ☆☆☆☆ 常盤新平といえばどうしてもアーウィン・ショーのイメージが強くて、昔うちの本棚に並んでいた『夏服を着た女たち』のハードカバーを思い出してしまうが、ちょっと調べると実はアシモフの『裸の太陽』やクリスティーの『青列…

スウィングガールズ

『スウィングガールズ』 矢口史靖監督 ☆☆☆ 日本版ブルーレイを購入して鑑賞。私は李相日監督の『フラガール』が大好きで、同じ系統の日本映画を観たいと思ってこれを入手した。矢口史靖監督作品は有名な『ウォーターボーイズ』も未見だが、ジャズ演奏と上野…