2020-01-01から1年間の記事一覧

イヴォンヌの香り

『イヴォンヌの香り』 パトリック・モディアノ ☆☆☆☆☆ モディアノの『イヴォンヌの香り』を再読した。昔パトリス・ルコント監督の映画化作品も観たが、ほとんど記憶に残っていない。あの名作『髪結いの亭主』を水で薄めたような雰囲気で、エロティックなシー…

牡丹燈籠

『牡丹燈籠』 山本薩夫監督 ☆☆☆☆★ 超有名な怪談映画だが、私は今回日本版DVDを購入して、ようやく初鑑賞した。別に怪談映画なんて特殊なジャンルに関心があるわけではないのだけれども、これは高橋克彦氏の『幻想映画館完全版』で大絶賛されているのを読んで…

ダイヤモンド広場

『ダイヤモンド広場』 マルセー・ルドゥレダ ☆☆☆☆☆ マルセー・ルドゥレダは20世紀半ばに執筆活動したスペインの作家である。彼女はバルセロナ出身で、本書はスぺイン語ではなくカタルーニャ語で書かれた。スペイン語とカタルーニャ語の複雑な関係や、カタル…

マリッジ・ストーリー

『マリッジ・ストーリー』 ノア・ボームバック監督 ☆☆☆☆☆ これも『ローマ』と同じくNetflixオリジナル映画なのだけれども、映画館で公開されてヒットする映画がほぼスーパーヒーローものかスパイアクションものという昨今、こんな良質なドラマ映画を制作し配…

柳生非情剣

『柳生非情剣』 隆慶一郎 ☆☆☆☆☆ これは隆慶一郎の短篇集で、「慶安御前試合」「柳枝の剣」「ぼうふらの剣」「柳生の鬼」「跛行の剣」「逆風の太刀」の六篇が収録されている。柳生一族の剣士たちを一人ずつ取り上げる趣向で、作品ごとに主役は違うけれども、…

ナポリ湾

『ナポリ湾』 メルヴィル・シェイヴルソン監督 ☆☆☆★ 昔買った手持ちのDVDで再見。公開は1960年、主演はクラーク・ゲーブルとソフィア・ローレン。まあ他愛もないロマンティック・コメディなんだけれども、私は結構好きだ。あらすじは以下の通り。 フィラデル…

言葉人形

『言葉人形』 ジェフリー・フォード ☆☆☆☆ 以前に『白い果実』と『シャルビューク夫人の肖像』を読んだことがあるジェフリー・フォード、本邦初の短篇集が出たというので買ってみた。『白い果実』『シャルビューク夫人の肖像』を読んだのはもう10年以上前なの…

陸軍中野学校

『陸軍中野学校』 増村保造監督 ☆☆☆☆★ 日本版ブルーレイを購入して鑑賞した。1966年公開のモノクロ映画である。主演は市川雷蔵、その恋人役が小川真由美、上司役が加東大介。古い映画だがさすが修復版ブルーレイだ、映像はきれいで申し分ない。 当時日本に設…

下流志向(その2)

(前回の続き) さて、本書終盤の目玉となるトピックは「師」について、つまりメンターとは何か、である。前述の通り、これから学ぼうとする者は学ぶものの価値判断がまだできない。だからメンターの能力も価値も判断できない。判断できないなら、一体どうや…

下流志向(その1)

『下流志向』 内田樹 ☆☆☆☆☆ またしても内田樹氏の著作を読了。この人の本を全巻読破する勢いだが、面白くて止まらないのだからしかたがない。本書は教育、労働、そして師というものについて掘り下げた本で、大体において私が一大感銘を受けた『最終講義』の…

評決

『評決』 シドニー・ルメット監督 ☆☆☆☆☆ 三谷幸喜がどこかに書いていたのと同じく、私もやっぱり法廷もの映画が大好きで、『情婦』『推定無罪』『十二人の怒れる男』『それでもボクはやってない』『レインメーカー』など何度繰り返し見たか分からないし、そ…

真珠郎

『真珠郎』 横溝正史 ☆☆☆☆ 横溝正史の中篇集『真珠郎』を読了。「真珠郎」「孔雀屏風」の二篇が収録されている。これはかなり初期の作品集で、いずれも発表は昭和36年から37年頃。金田一耕助のデビュー作『本陣殺人事件』が1946年発表なので、それに先駆ける…

ポテチ

『ポテチ』 中村義洋監督 ☆☆☆★ 手持ちDVDで再見した。これは上映時間が1時間ちょっとと全国公開された映画にしては異常に短いが、原作が短篇なので、無理に引き延ばさず自然な形で映像化したのだろう。内容的にもテーマ的にも引き伸ばすほどの濃さもなく、と…

国語教師

『国語教師』 ユーディト・W・タシュラー ☆☆☆☆☆ ドイツ推理作家協会賞受賞、「このミステリーがすごい!2020年版」海外編第10位、「ミステリが読みたい! 2020年版」海外篇第4位&新人賞、という売り文句につられて買ったので完全にミステリだと思って読み始め…

ナイトクローラー

『ナイトクローラー』 ダン・ギルロイ監督 ☆☆☆☆★ Amazon Primeで再見。前観た時もすごい映画だと思ったが、二度観てもやっぱり迫力がある。迫力だけでなく、ギラつく刃のような剣呑さがみなぎっている。どう考えても傑作だ。Amazon Primeの会員はみんな観た…

蝶を飼う男

『蝶を飼う男 シャルル・バルバラ幻想作品集』 シャルル・バルバラ ☆☆☆★ シャルル・バルバラなる聞き慣れない作家の短篇集を入手した。19世紀後半のフランス人作家で、大詩人ボードレールと親しく交わり、ポーをボードレールに紹介し、リラダンとも面識があ…

地獄

『地獄』 中川信夫監督 ☆☆☆☆ クライテリオン版のDVDを購入して鑑賞。これは昔、高橋克彦氏が『幻想映画館完全版』の中で激賞していたので興味を持ち、ニューヨークのジャパン・ソサエティの日本映画上映会にまで出かけて行って観たフィルムである。中川信夫…

シンコ・エスキーナス街の罠

『シンコ・エスキーナス街の罠』 マリオ・バルガス=リョサ ☆☆☆☆☆ リョサの新刊が出たので飛びつくようにして買った。マルケスもコルタサルもドノソもフエンテスももはやこの世の人ではない現在、ラテンアメリカ文学勃興期の主要プレイヤーで依然書き続けて…

息子

『息子』 山田洋次監督 ☆☆☆☆☆ 日本版DVDを入手して鑑賞した。1991年公開の、今となっては30年近く前の映画だ。出演は永瀬正敏、三國連太郎、和久井映見、田中邦衛、いかりや長介、浅田美代子、原田美枝子、となんとなく懐かしさを感じるメンツである。無論今…